1.はじめに:マンションの外壁に使われるタイルとは
マンションの外壁は、特に分譲タイプではタイル張りがスタンダードとなっています。高級感が醸し出されることが大きな特徴ですが、機能やメンテナンスの面で優れていることも、数多く採用されている理由でしょう。そうしたタイルの種類や、タイルがどのように取り付けられているかを知っておけば、長期にわたってタイルのメンテナンス方法がわかります。
1.1 タイルが使用されることになった経緯
外壁タイルが急激に普及し始めたのは1980年代後半からで、その要因として「モザイクタイル貼り工法」の普及が挙げられます。
かつての外壁タイルの工法はモルタルを躯体コンクリートに塗って職人がタイルを外壁に一枚ずつ貼っていく工法(湿式工法)であったため、時間と費用がかかる高級外壁でした。「モザイクタイル貼り工法」は、専用のシートにあらかじめ複数枚のタイルを外壁に合わせて貼り付けておき、そのシートごと外壁に貼ることで作業時間を大幅に短縮できる工法です。
このモザイクタイル貼り工法の出現により、作業時間の短縮・費用の削減が実現でき、さらに熟練のタイル職人でなくとも施工ができるということで多くのマンションの外壁に使用されることになりました。近年では躯体コンクリートに下地用サイディングを貼り付けた上からタイルを接着貼りしたり引っ掛け式でタイルを貼る乾式工法が開発されていますが、湿式工法と比べるとコストが高くなることが多いですが、品質を一定に保つことが容易であり、加えて作業時間の短縮化・メンテナンスが簡単になることがメリットです
2.外壁タイルのメリットとデメリット
外壁には、タイル外壁をはじめとして、モルタルやサイディングボードやALCパネルといった種類が存在します。外壁には、建物全体の雰囲気を決定づけ、風雨や日差しから建物を守る役割をもつ重要な部位です。建物の構造に関わるコンクリートの面は、そのままでは傷みやすく汚れやすいため、表面には何らかの仕上げが施されます。中でも人気があるのは、タイルです。
2.1 外壁タイルのメリット
外壁タイルのメリットしては「見た目の高級感」が挙げられますが、同時に「高い耐久性」も魅力のひとつです。タイルのデザインは多種多様に存在し、モルタル外壁の塗装仕上げよりも建物の個性を引き立てることが可能です。
耐久性についても非常に高く、タイル自体に防水機能が備わっているので、タイルに亀裂が入って浮きや剥落が起こらない限りはメンテナンスも不要です。ただ、実際のところメンテナンスが全く不要な外壁は存在しませんので、外壁タイルも例外ではありません。また、塗装仕上の外壁とは違い、塗替えなどをする必要がないので小規模な修繕工事費用であれば比較的安価なところもメリットになります。※但し、剥落している箇所が大きく、大量のタイルの張り替えが必要な場合は高額になります。
2.2 外壁タイルのデメリット
先ず挙げられるデメリットとしては、竣工時の初期費用がその他の外壁(モルタル壁・ALCパネル・サイディングボードなど)よりも高いことです。
また、タイルのメンテナンスが不十分だとタイルが剥落し、通行人や居住者が怪我をしたとなると重大な補償問題になってしまう可能性があります。タイルの剥落を未然に防ぐには定期的な検査とメンテナンスが必要不可欠です。
3.外壁タイルの不具合(浮き・亀裂・剥がれ・剥落)
外壁タイルは、高い耐久性があるとはいえ、経年劣化を避けることができません。そんな外壁タイルに関して、どのような劣化兆候が発生するのか、紹介します。
3.1 外壁タイルの浮き・剥離・剥落
外壁タイルの浮きとは、躯体コンクリートと外壁タイル及びモルタルの下地材の接着不良により起こる隙間のことです。施工不良により浮き上がってきてしまうことが多く、放置しておくと剥落してしまうことがあります。
近年では接着剤の改良も進んでおり、タイルが浮いてしまうことは以前より遥かに少なくなりましたが、外見からだけでは浮いているかどうかは判断しづらいうえに年数が経たないと施工不良でタイルが浮いているのかわからないことが厄介です。タイルが剥落し、通行人や入居者にタイルが衝突することで甚大な事故につながると物件の所有者の責任になることも多く、建物の修繕工事費用や被害者への補償など全て物件所有者の負担になる可能性が高いです。
3.2 外壁タイル及び躯体コンクリートの亀裂
外壁タイルは防水性と耐久性が高い素材ですが、メンテナンスがいらない外壁ではありません。経年変化によって、躯体コンクリートが膨張と収縮を繰り返すことで貼り付けてある外壁タイルにも影響を及ぼしタイルに亀裂が入ることもあります。
また、自然災害である地震や建物の設計不良・施工不良などでも躯体コンクリートと外壁タイルに亀裂が入ることがあります。
3.3 外壁タイルのエフロレッセンス現象(白華現象)
エフロレッセンスとは、強アルカリ性のコンクリートから水分とともにアルカリ成分が溶け出し表出したものです。
コンクリートのひび割れから水が侵入したり、コンクリート自体の水分の蒸発により発生します。このエフロレッセンスが侵攻すると、コンクリート内部の鉄筋が錆びてしまい躯体の寿命を短くする原因になります。
3.4 外壁タイル間のシーリング
外壁タイルにはある一定の間隔で伸縮用のシーリング目地が入っています。躯体コンクリートが動いたり膨張と収縮を繰り返すことで外壁タイルに負担がかかりひび割れが起こるので、それを防ぐためにシーリング材を充填し緩衝材にすることでタイルへの負担を緩和しています。
このシーリングは太陽光や雨風による経年劣化で硬化し剥離すると、雨水が躯体へ侵入してしまうので、定期的なシーリングの打ち替えが必要になります。
4.外壁タイルの補修・張り替え工事とメンテナンス
4.1 クラック補修
クラックが入っているタイルをハンマーやタガネで撤去し、下地にまでクラックが入っている場合はクラック箇所をサンダーで削り断面をU字型になだらかにしてからシーリングを充填(Uカットシーリング工法)し貼り付け部分に接着剤を塗布し新しいタイルを貼ります。
ただし、既存のタイルと全く同じデザインのタイルは先ずそろうことがないので、張り替えた箇所は周りの既存タイルと差異が出ます。
4.2 アンカーピンニング工法
タイルの打診検査によって外壁タイル内部の下地材と躯体コンクリートの間に隙間(浮き)が生じていることを確認した場合、タイルを張り替えずに「アンカーピンニング工法」で補修工事を行うことがあります。
アンカーピンニング工法とは、ドリルでタイルの表面から穴を開け、内部の剥離部分にエポキシ樹脂を充填して隙間を無くし、穿孔した穴にピンを差し込みタイルと躯体コンクリートを一体化させる工法です。
5.まとめ
タイルの外壁は非常に耐久性が高い上に見た目にも高級感が有る人気の外壁ではありますが、どんなタイルであってもいずれはメンテナンスが必要になります。タイルの打診検査と補修・修繕工事・メンテナンスを定期的に行うことで、躯体の劣化と剥落による重大な人身事故を防ぎ、安心の不動産経営を継続していきましょう。